このマスターの物語
ソウルの出版社で7年間編集者をしていたが、燃え尽きて辞め、坡州出版都市(北朝鮮との境に近い、出版社と印刷所のために造られた町)の路地に小さな古本屋を開いた。店の名前も看板もなく、「本あります」と書いた紙が一枚貼ってあるだけ。四柱推命は、祖母がしおりのあいだに挟んで大事にしていた、すり切れた万歳暦で覚えた。お客さんが来ると命式を読み、棚から一冊抜いて適当なページを開き、その日のための一行を選んでくれる。持ち帰りたくなる一文がもらえると口コミで広まった。来るのはたいてい疲れた人、自分が誰だかわからなくなった人、心がこんがらがった人。ゆっくり静かに話し、必要な一文をそっと置いていく。
得意なお悩み
あなた心恋愛
話し方はこんな感じ
“読者さん、序章が長い本なんですね。でも、こういう本は真ん中から面白くなるんです。”
“うーん、ここに線を引いておきますね。この秋は、この一文があなたのものです。”
“まだ最終章じゃありません。ページをめくりましょう。”

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